2012年9月26日水曜日

オスプレイ配備 安全宣言 命差し出す配備あり得ぬ 日本国民を守らない日米安保 

各紙社説・主張・論説を紹介する。

朝日新聞)オスプレイ配備―危うい「安全宣言」(9/20)
読売新聞)オスプレイ配備 抑止力と安全性の両立を図れ(9/20)
毎日新聞)オスプレイ安全宣言 不安拭えぬ見切り発車(9/20)
日経新聞)オスプレイ運用に残る課題 (9/20)
産経新聞)オスプレイ 本格運用急ぎ対中抑止を(9/24)
東京新聞)オスプレイ 理解得られぬ安全宣言(9/21)

北海道新聞)オスプレイ 安全宣言は住民軽視だ(9/20)
東奥日報)安全に程遠い、見切り発車/オスプレイ(9/21)
新潟日報)オスプレイ運用 安全宣言の根拠はどこに(9/20)
信濃毎日新聞)オスプレイ 懸念だらけの見切り発車(9/20)
岐阜新聞)オスプレイ安全宣言 沖縄の理解、得られるか(9/21)
京都新聞)オスプレイ運用  安全宣言は沖縄無視だ(9/20)
神戸新聞)オスプレイ/誰のための「安全宣言」か(9/20)
山陽新聞)オスプレイ 見切り発車の「安全宣言」(9/20)
中国新聞)オスプレイ「安全宣言」 低空飛行の容認許せぬ(9/20)
徳島新聞)オスプレイ初飛行  配備ありきで強引すぎる(9/23)
愛媛新聞)オスプレイ飛行強行 努力規定で安全は守れない(9/23)
高知新聞)【安全宣言】配備ありき、に欠ける視点(9/20)
西日本新聞)オスプレイ 沖縄無視の配備は無理だ(9/20)
佐賀新聞)「オスプレイ安全宣言」普天間返還への努力を(9/25)
熊本日日新聞)オスプレイ配備 沖縄県民の安心には程遠い(9/24)
宮崎日日新聞)オスプレイ試験飛行開始 「安全宣言」は安心できない(9/23)
南日本新聞)[オスプレイ] 疑問を残した安全宣言(9/20)
沖縄タイムス)[オスプレイ安全宣言]民意踏みにじる暴挙だ(9/20)
沖縄タイムス)[日米防衛相会談]県民の声は届いてない(9/18)
琉球新報)試験飛行を強行 落ちない保証にはならぬ(9/22)
琉球新報)「安全宣言」と沖縄 「空飛ぶ恥」を飛ばすな(9/20)
琉球新報)安全確保策を了承 命差し出す配備あり得ぬ(9/19)
しんぶん赤旗)オスプレイ「安全宣言」 アメリカいいなり極まった(9/20)
しんぶん赤旗)欠陥機オスプレイ 運用見直しでなく配備中止を(9/19)
---------------------------
東京新聞)グアム共同訓練 陸自の海兵隊化を疑う(9/21)



朝日新聞 2012年9月20日00時46分
社説:オスプレイ配備―危うい「安全宣言」
 政府は、米軍の新型輸送機オスプレイの沖縄・普天間飛行場への配備にあたって、「安全性は確認された」と宣言した。
 これを受けて、米軍は、山口県・岩国基地での試験飛行をへて、10月中に普天間での本格運用を始める方針だ。
 だが、このままでは日米同盟はかえって危うくなる。沖縄県民の強い反発を考えると、そう危惧せざるを得ない。
 日米両政府で合意した安全対策は、たとえばこんな内容だ。
 低空飛行訓練は高度約150メートル以上、原子力施設、史跡、人口密集地を避ける。米軍施設・区域周辺では人口密集地を避け、海上を飛行する。回転翼から固定翼への「転換モード」での飛行は、時間を短くする。
 「可能な限り」とか「運用上必要となる場合を除き」といった留保が、たくさんついている。10月配備ありきで日米両政府が合意を急いだ、ととられても仕方ない。
 両政府はまた、今年起きた2件の墜落事故について、機体に不備はなく、人為ミスが原因だと強調する。それはわずかなミスでも墜落するということではないのか。不安は拭えない。
 政府は今後も、オスプレイの運用について米側と話し合っていくという。
 その際、忘れてならないのは、この問題の根っこにあるのは、普天間返還への道筋が一向に示されないということだ。
 これが解決されない限り、オスプレイ配備は、逆に日米安保体制のリスクとなりかねない。
 市街地のど真ん中にある普天間飛行場の周辺では、緊急着陸できる余地も少ない。小さなミスやトラブルでも、大きな被害につながりやすい。
 万一の事態など想定したくないが、仲井真弘多(ひろかず)沖縄県知事は事故が起きれば、全米軍基地の「即時閉鎖撤去」を求めると言っていた。そうなれば安保体制の致命傷になる。
 政府は一貫して、日米安保条約上、配備は拒否できないと説明してきた。問題がこじれると同盟がゆらぐといい、対日攻勢を強める中国を利することになるとの声も聞かれた。
 もちろん、日米安保体制は日本の安全に欠かせないし、日米同盟にヒビが入るのは望ましいことではない。
 だが、すでに沖縄では、問題はオスプレイの安全性という次元を超え、日米両政府への強烈な不信となって広がっている。
 これをくいとめるには、普天間返還の実現でこたえるしかない。日米両政府は、原点に戻って検討を急ぐべきだ。

(2012年9月20日01時21分  読売新聞)
オスプレイ配備 抑止力と安全性の両立を図れ(9月20日付・読売社説)
 在日米軍の抑止力の強化と訓練の安全性を両立させることが肝要だ。
 政府は、米軍の新型輸送機MV22オスプレイについて、「安全性は十分に確認された」と結論づける安全宣言を発表し、国内飛行を容認した。
 米軍岩国基地に一時駐機中のオスプレイ12機は、週内にも試験飛行を行った後、沖縄県の普天間飛行場に配備される。10月中旬に本格運用を開始する予定だ。
 安全宣言は、4月のモロッコと6月の米フロリダ州の墜落事故に関する日本独自の原因分析に加えて、日米合同委員会で具体的な安全確保策に合意したことを踏まえたものだ。日本側として安全策を追求した成果と評価できる。
 日米合意は、低空飛行を地上150メートル以上に限るほか、事故が起きた、垂直飛行から水平飛行に移行する「転換モード」を最小限にすることなどを盛り込んだ。
 米軍は当初、部隊運用の制限に反対し、日米協議は難航した。だが、日本の国内事情に配慮して譲歩し、政治決着したものだ。米軍が今回の合意を順守し、安全性の確保に努めるよう求めたい。
 沖縄、山口両県の関係自治体は政府の安全宣言にもかかわらず、配備反対の姿勢を変えていない。配備に地元の同意は不要とはいえ、安定した運用に向けて、政府には、地元への説明を尽くし、理解を広げる努力が欠かせない。
 そもそもオスプレイが極めて危険な航空機であるかのような見方は、誤解に基づく部分が多い。
 無論、航空機である以上、事故や故障は起こり得るが、最新の安全対策を講じており、老朽化したCH46輸送ヘリなど米軍の他の航空機より危ない、といった議論は合理的ではない。
 見過ごしてならないのは、オスプレイの優れた機能による在日米軍の抑止力の強化である。
 CH46より最大速力は2倍、搭載能力は3倍、行動半径は4倍となり、緊急時の海兵隊の機動展開・即応力が大幅に向上する。
 尖閣諸島をめぐる中国との軋轢が高まり、今後も中長期的に続く恐れがある中、日米の防衛協力を通じて、南西諸島の離島防衛や北東アジアの安定に貢献しよう。
 オスプレイの訓練は、沖縄だけでなく、本土の米軍・自衛隊施設でも行われる予定だ。航続距離が長く、空中給油もできるため、訓練の本土移転が可能になる。
 沖縄の基地負担の一部を本土が受け入れるとともに、日米連携を強める観点から推進すべきだ。


毎日新聞 2012年09月20日 02時30分
社説:オスプレイ安全宣言 不安拭えぬ見切り発車
 政府は、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて「安全宣言」を出した。一時駐機している米軍岩国基地(山口県)で近く試験飛行を行い、10月に沖縄の米軍普天間飛行場に配備する計画だ。
 4月にモロッコで、6月には米フロリダ州で墜落事故を起こしたオスプレイの配備には、安全性について沖縄などで懸念が強い。住民の不安を拭えないままの見切り発車で、極めて残念な決定である。
 政府は宣言で、二つの事故は「人的要因によるところが大きい」との米軍の調査結果を追認し、「機体自体に問題があるわけではないことが確認された」と述べている。
 一方、安全性向上のため、日米合同委員会で運用ルールを決めた。両事故が垂直離着陸モードから水平飛行モードへの転換時に起きたことから、垂直離着陸モードの飛行を米軍施設・区域内に限り、転換モードの飛行時間をできるだけ短くするという。また、基地への進入・出発経路は人口密集地を避け、低空飛行訓練では高度約150メートル以上で飛行することとした。宣言は、これによって「運用に関しても最大限の安全性を確保できる」としている。
 しかし、これらの対策で住民の不安が解消できるとは到底思えない。普天間は宜野湾市の中心部にある。住宅に囲まれ、近くには公共施設も多い。宣言は、飛行経路について「可能な限り学校や病院を含む人口密集地域上空を避けるよう設定」し、「可能な限り海上を飛行する」としたが、普天間飛行場では、住宅密集地の上空を飛ばざるを得ない。
 周辺住民の危険性除去こそ普天間移設の出発点だった。そこにオスプレイを配備する計画に、県民大会で10万1000人(主催者発表)が反対の声を上げたのは当然である。
 墜落事故後も、海兵隊のオスプレイは、7月と9月に米ノースカロライナ州で緊急着陸するトラブルを起こしている。宣言はオスプレイ配備による「抑止力」の向上を強調しているが、事故におびえながら生活する普天間周辺住民の苦痛と引き換えにすることはできない。
 宣言について福田良彦岩国市長は森本敏防衛相に「認められないという気持ちは変わらない」と不満を表明した。沖縄県の仲井真弘多知事も記者団に「基地周辺の県民に、落ちてくるかもしれないものを抱えておけという論理は成り立たない」と語った。
 宣言は「(オスプレイの)事故率や件数は高い数字でない」と言う。しかし、普天間周辺では小さなトラブルも人命に関わる事故につながりかねない。そんなことになれば日米安保体制を揺るがす事態になることを、日米両政府は自覚すべきだ。

日経新聞 2012/9/20付
社説:オスプレイ運用に残る課題
 「安全性を確認し、運用を開始させることにした」。米海兵隊が米軍普天間基地(沖縄県)への配備を予定している垂直離着陸輸送機オスプレイについて、日本政府はこう宣言した。米軍岩国基地(山口県)で近く、試験飛行が始まる見通しだ。
 オスプレイは今年になって2回も墜落事故を起こしており、沖縄や山口両県だけでなく、米軍基地を抱える自治体からも配備への不安の声が上がっている。
 日米両政府はこうした懸念を受け、オスプレイの機体に欠陥がないか調査し、安全運用のための対策もまとめた。今回の「宣言」はそうした作業を踏まえたものだ。
 日本への特定の装備導入に際し、米軍がこのような運用面の安全対策の取り決めに応じたのは初めてという。これで万全とは言えないが、日本国内の根強い反発を受け、米側が一定の歩み寄りをみせたことは進展といえる。
 安全対策では、低空飛行訓練を500フィート(約150メートル)以上で実施し、学校や原発施設、人口密集地の上空を避ける原則が確認された。機体が不安定になる危険を防ぐため、回転翼を前に傾ける「転換モード」での飛行時間をできるだけ短くすることも定めた。
 だが、受け入れ先の沖縄では、なおオスプレイ配備への反対が和らぐ気配はない。米国内では今月に入ってからも、オスプレイが緊急着陸する騒ぎが起きた。
 日米両政府は安全対策の順守を徹底するとともに、運用が始まった後も、必要があればその内容を改めていってほしい。
 その一方で、オスプレイの機能を有効に生かす努力も大切だ。尖閣諸島をめぐる日中の対立が激しくなるなか、日本の離島防衛の重要性は増している。
 いま沖縄の米海兵隊が使っている輸送ヘリCH46に比べると、オスプレイは速度、航続距離、搭載重量のすべてにおいて優れている。こうした能力は日本の離島防衛に役立ち、対中抑止力を強めることにもなる。


産経新聞 2012.9.24 03:05
【主張】オスプレイ 本格運用急ぎ対中抑止を
 米海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイに関する日本政府の安全宣言を受け、米軍岩国基地で第1陣12機の試験飛行が始まった。調整を終えた順に沖縄県の普天間飛行場へ配備され、来月中旬にも本格運用に入る。
 当初計画よりも遅れたのは残念だが、運用準備が整ったことを評価したい。オスプレイは海兵隊の展開能力を大幅に強化し、日米同盟の抑止力を高める上でも不可欠だ。
 尖閣諸島奪取を狙う中国の攻勢などで日本の安保環境が急速に悪化する中で、その導入は一刻の猶予もならない。野田佳彦政権は安全確保に関する日米合意を踏まえつつ、早期運用開始へ全力を投じてもらいたい。
 オスプレイは現行のCH46ヘリと比べて速度、積載量、行動半径が2~4倍に強化される。
 とりわけCH46の行動半径140キロに対し、オスプレイは600キロある。普天間(沖縄本島)から約420キロ離れた尖閣諸島の有事に即応できるなど、軍事・戦略上のメリットは極めて大きい。
 森本敏防衛相が「米海兵隊の抑止機能が格段に向上し、日本の安全保障にかかわる大切な措置だ」(21日)と述べたように、中国の強引な海洋進出や尖閣への攻勢を牽制(けんせい)・抑止し、朝鮮半島の緊急事態に備える上で欠かせない意義があることを銘記すべきだ。
 安全性に関する地元の懸念は完全に払拭できていないものの、日米の運用合意では低空飛行訓練の最低高度を150メートル以上とし、市街地の安全や騒音などにも配慮することで米側も歩み寄った。
 国内の反対論には頭から「オスプレイは危険」と決めつけ、日本の平和と安全を守る必要性に聞く耳を持たない姿勢もみられる。そうした一部の声に流されたり、ひるむようでは、国民の生命と安全、領土・主権は守れない。
 今後はこうした運用ルールを徹底しつつ、体験搭乗なども活用して国民をいかに説得していくかが問われる。森本氏や野田首相はその先頭に立ち、オスプレイ導入の意義や必要性を積極的にアピールしてもらいたい。
 同時に、普天間移設を中心に遅れている在日米軍再編を加速させる作業も忘れてはならない。地元の基地負担を軽減し、日米の抑止力を強化することが米軍再編の原点だ。オスプレイ配備をその重要なきっかけとしていきたい。


東京新聞 2012年9月21日
【社説】オスプレイ 理解得られぬ安全宣言
 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイに関する日本政府の「安全」宣言を信じる国民がいるのだろうか。普天間飛行場への配備ありきでは、国民、特に沖縄県民の理解はとても得られない。
 操縦ミスで度々墜落する軍用機を安全と言えるのか。安全性に疑念が残るその飛行機を、かつて米国防長官自身が「世界一危険」と指摘し、日米両政府が日本側への返還で合意した米海兵隊普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)になぜ配備できるのか。
 解せないことがあまりにも多すぎるが、日本政府の「安全」宣言を受け、米海兵隊は一時駐機している岩国基地(山口県岩国市)できょうにもオスプレイの試験飛行を始め、十月から普天間飛行場での本格運用を開始するという。
 日本政府は安全性を確認するため、今年起きた二件の墜落事故原因を独自に調査するにはした。
 しかし米側から提供された情報の検証が中心で、米側が墜落は「機体自体の要因でない」「人的要因が大きい」と結論づけた以上、それを覆す材料は出ようがない。
 十月の普天間配備方針を追認する形だけの調査と言ってもいい。それで沖縄県民に配備受け入れを迫るのは無理というものだろう。
 日本側はオスプレイの運用に注文をつけてもいる。事故の危険性が指摘される低空編隊飛行や「垂直離着陸モード」での飛行は米軍施設上空に限定する、低空飛行訓練は航空法の安全高度百五十メートル以上を順守し、原発や史跡、人口密集地の上空は避ける、などだ。
 ただ「可能な限り」とか「運用上必要な場合を除き」などの留保がつく。厳守される保証はない。
 玄葉光一郎外相は「過去に特定の装備の導入について合意したことはない。率直に言って非常に難しい交渉だった」と胸を張った。
 政府の努力はこの際、多とする。同時に、オスプレイ配備は日米安全保障条約が事前協議の対象としている装備の重要な変更に当たらず、日本側がその配備を止められないという現実からも目を背けるわけにはいかない。
 オスプレイ配備は在日米軍基地の74%が集中する沖縄県民にさらに負担を強いる問題だけでなく、安保条約上の課題も惹起(じゃっき)する。
 日米安保が日本を含む東アジアの平和に必要だとするのなら、基地提供という条約の義務を誰がどの程度負い、米側にはどこまで主張すべきなのか。沖縄県民に任せるのでなく、国民全体が自らの問題として考えなければならない。

--------------------------

北海道新聞 2012年9月20日
社説:オスプレイ 安全宣言は住民軽視だ(9月20日)
 政府はきのう米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの安全性が確認されたと宣言した。
 相次ぐ事故は「人的要因によるところが大きい」として機体に問題はないと説明した。米側の報告を追認したものだ。回転翼の向きを変える際に事故が多発する理由など、不明な部分は多い。とても安心につながるとは思えない。
 試験飛行を経て沖縄県の米軍普天間飛行場への配備を進めるというが、地元は強く反発している。危険にさらされる住民の声を重視し、配備計画は撤回すべきだ。
 オスプレイは従来のヘリに比べ飛行速度や行動半径などの能力が向上するという。だが問題は安全性だ。
 今年4月にモロッコ、6月に米フロリダで墜落事故が起き、死傷者が出た。風の状況や先行機との距離などに関する操縦士の判断ミスが原因という。だが機種の特徴と関連づけた原因の説明は十分とはいえない。
 米国の専門家は「操縦ミスの許容範囲が小さい」と指摘する。わずかなミスでも事故につながりやすく、操縦が難しい機種なのではないか。
 従来の機種に比べて事故率は低いとされる。だが大規模な事故の発生率は低くても、小規模な事故の率は逆に高いという統計もある。
 米軍はオスプレイをハワイに配備する計画を撤回した。プロペラから発する気流が地上の遺跡に影響を与えるという理由だ。
 住宅密集地である普天間の上空を飛べば、地上には遺跡どころか生身の人間がいる。ハワイはやめて普天間には配備する理由は何なのか。人命軽視と言われても仕方ない。
 日米両政府は山口県岩国基地で試験飛行を始め、来月普天間で本格運用する方針を変えていない。最初から配備ありきだったのではないか。そんな疑念を禁じ得ない。
 低空飛行訓練の高度を地上150メートル以上にしたり、飛行が不安定になるとされる回転翼を前に傾けての飛行時間は短くするなど配慮する。だがいつどこで起きるかわからないのが事故だ。住民の不安は消えない。
 今月上旬には、オスプレイ反対の沖縄県民大会が開かれた。約10万人が「これ以上の基地負担を断固拒否する」と決議し、政府に提出した。
 沖縄では1959年に米戦闘機が小学校に墜落し、児童が多数死亡した。2004年には米軍ヘリが沖縄国際大に墜落した。「安全な空」への願いを踏みにじってはならない。
 森本敏防衛相は沖縄県や山口県を訪れて地元の説得に余念がない。反発を抑え込んで、配備計画を強行しようとしているように見える。
 日本政府は米国よりも日本の国民の声に耳を傾けるべきではないか。


東奥日報 2012年9月21日(金)
社説:安全に程遠い、見切り発車/オスプレイ
 米軍新型輸送機MV22オスプレイの国内運用をめぐり、日本政府は「安全宣言」を出した。一時駐機している山口県岩国基地での試験飛行を経て、10月から沖縄県の普天間飛行場で本格運用する計画だ。
 日本政府は「安全性は十分確認された」と、あたかも一件落着したような口ぶりだが、安全性の根拠があいまいで説得力を欠く。配備後の事故への懸念は沖縄を中心に根強く、安心には程遠い。
 「初めに配備ありき」ではないか。米側の言い分をうのみにした見切り発車と言わざるを得ない。
 モロッコと米フロリダ州で今年起きた墜落事故に続き、今月に入り米南部の市街地に緊急着陸していた。
 米側は墜落事故の原因をいずれも機体に不備はなく「人為ミス」と結論付け、日本政府は追認した。だが、2件の調査結果だけで安全性を証明するには不十分だ。
 専門家は、回転翼機と固定翼機の特長を併せ持つだけに双方の欠点も重なり、操縦が難しいと指摘している。むしろ、調査結果は人間に付きもののミスを許さない機体であることをも印象づけた。
 日米が合意した安全確保策も、十分な内容とは言い難い。
 飛行が不安定になると指摘される回転翼を前傾した「転換モード」での飛行時間はできる限り短くし、機体が接近する編隊飛行や回転翼を上向きにする飛行は米軍施設・区域上空に限定する。
 また、住宅密集地の飛行は極力避け、深夜・早朝飛行は必要最低限にする。
 本県を含む全国各地での低空飛行訓練では、日本の航空法の安全高度150メートルを順守する-という。
 これらは、米側の裁量に任せた運用面の取り決めにすぎず、実効性には疑問が残る。沖縄ではこれまで結ばれた夜間・早朝の騒音防止や飛行経路についての日米合意が事実上守られていない現実がある。
 そもそも市街地のど真ん中にある「世界一危険な基地」を出入りするのだ。住民は新たな不安を抱え、負担はますます重くなる。
 日本政府は日米安保条約上も配備を拒めないと主張してきた。領土問題で中国、韓国との関係が緊張し、頼みとする日米同盟のきしみは許されないと、日米協議を急いだのは明らかだろう。
 今月上旬開かれた沖縄県民大会で10万人超の参加者が「断固反対」を訴えた。
 「日本の安全保障」を理由に基地負担を背負わされてきた沖縄と正面から向き合おうしない、日本政府に対する憤りに他ならない。
 沖縄の不信は募る。問題の根底には、普天間返還の道筋が一向に示されないことがある。
 万一、重大事故が起きた場合は、仲井真弘多知事は「全基地即時閉鎖」の動きに向かう、としている。
 沖縄の声を無視し、このまま配備を推し進めて定着させるならば、日米同盟は抜きがたいトゲをまた一つ抱えることになる。


新潟日報2012年9月20日
社説:オスプレイ運用 安全宣言の根拠はどこに
 最初からスケジュールありきだった、ということか。
 米軍新型輸送機MV22オスプレイの国内運用について、政府は19日、「安全性は十分確認された」とする「安全宣言」を発表した。
 これを受け、米側は週内に山口県の岩国基地での試験飛行を始め、10月から沖縄県の普天間飛行場で本格的に運用する予定だ。
 だが、仲井真弘多知事が「われわれは安全だと思っていない。理解不能だ」と不信感をあらわにするなど、過剰な基地負担を強いられている関係自治体の反発は根強い。
 深刻な事態が起きてからでは遅い。こうした懸念の声に、謙虚に耳を傾けるべきではないか。
 日米で合意した安全確保策は、本県を含む全国各地での低空飛行訓練の際、航空法の安全高度150メートル以上の高度を順守させ、人口密集地などの上空を避けることが柱だ。
 機体同士が接近する低空編隊飛行は米軍施設上空に限定することや、飛行が不安定になるとの指摘がある回転翼を前傾させた「転換モード」での飛行時間を、可能な限り短くすることも盛り込んだ。深夜、早朝の飛行も最小限にするという。
 しかし、普天間や嘉手納基地で夜間・早朝飛行を最低限にするとした騒音防止協定などは、これまで守られてこなかった現実がある。
 安全確保策が順守されているかどうかを誰がチェックし、検証するのか。本県は和歌山県と同様、低空飛行の目撃情報などを募る「通報窓口」を設ける考えだが、自治体任せでいいはずがない。
 さらに問題なのは、安全宣言とはいっても、あくまで高度や飛行ルートといった運用面の取り決めにすぎないことである。
 そもそも沖縄県などが配備に反対しているのは、オスプレイの事故が後を絶たないからだ。
 今年4月以降、モロッコと米フロリダ州で墜落事故を起こしたのに続き、9月に入って米南部の市街地に緊急着陸していたことが分かった。
 墜落事故の原因について政府は、2件とも「人的要因が大きい」という報告書を作成し、米側の調査結果を追認した。
 森本敏防衛相は「機体の安全に特段の問題はない」と結論付けたが、それならなぜ事故が相次ぐのか。
 それだけ操縦が難しく、慎重さを要するということを意味しているのではないのか。
 安全面で焦点の一つとなっているのが、オートローテーション(自動回転)が備わっているかどうかだ。
 これは全エンジンが停止しても、機体が降下する際の空気抵抗を利用して回転翼を回しながら揚力を得、安全に着陸する機能である。
 米海兵隊や日本の防衛省は「ある」と主張している。
 だが、米政府監査院が作成した報告書には、量産に先立ち、開発を進める上で必要な条件からこの機能を外したと記載され、海兵隊などの主張を疑問視する見方もある。
 安全の根拠は何か。その提示が日米双方に求められている。

信濃毎日新聞 2012年09月20日(木)
社説:オスプレイ 懸念だらけの見切り発車
 日米両政府は、米軍の新型輸送機オスプレイの運用に関する安全確保策で合意した。日本政府は直ちに「安全宣言」を出して、お墨付きを与えた。
 墜落など深刻な事故が相次いでいる機体である。野田佳彦首相は国会で、日本として独自に機体の安全性を確認するまでは飛ばすことはない、と言い切っていた。どう確認したのか、今回の安全宣言だけでは明らかでない。
 にもかかわらず、政府は運用開始に「ゴーサイン」を出した。配備先の米軍普天間飛行場のある沖縄県や訓練ルートに入っているとみられる長野県など、全国各地で不安の声は依然根強い。
 合意した安全確保策は抜本的なものとはいえず、米軍が都合よく解釈する恐れが多分にある。米側が急ぐ10月の運用開始に合わせた急ごしらえの感が強い。
 国民の生命に関わる重大な問題である。懸念を残したままの見切り発車は納得できない。安全性の再検討を求める。
 オスプレイは、主翼両端の回転翼の角度を変えることでヘリコプターのような垂直離着陸と固定翼機並みの速度での飛行ができる。回転翼を前に傾ける「転換モード」での飛行は不安定になりやすい、との指摘が出ている。
 今回の安全策では、転換モードによる飛行を普天間飛行場上空に限定する案が検討されたものの、米側の主張通りに「飛行時間はできるだけ短くする」との文言で決着したとされる。
 このほか、▽各地で予定されている低空飛行訓練では安全高度150メートルを守る▽原発や人口密集地の上を飛ぶのは避ける▽深夜、早朝の飛行は必要最小限とする―などを盛り込んでいる。
 最大の問題は合意に曖昧な表現が多いことだ。米軍機の運用に関する日米間の取り決めはほかにもあるが、特に沖縄では有名無実化している、との声が強い。
 普天間を抱える宜野湾市によると、規制されているはずの米軍機の夜間飛行は常態化し、ヘリの訓練ルートでも合意が守られていないそうだ。同市の担当者は「今回の合意が順守されるか、懸念している」と述べている。
 万が一、深刻な事故が起きたときにはどうするのか。安全宣言を出した以上、事故の責任は日本政府も負うことになる。
 オスプレイの開発などに関わった米専門家からも危険性を指摘する証言が出ている。政府はこうした声に耳を傾け、国民が納得できる対策を再提示すべきだ。

岐阜新聞 2012年 9月21日(金)
社説:オスプレイ安全宣言 沖縄の理解、得られるか
 政府が安全を宣言した。米軍の新型輸送機MV22オスプレイについて「安全性は十分確認された。飛行運用を開始させる」とし、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)への配備を容認した。
 あたかも「一件落着」とするような言いぶりだが、沖縄県の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事は「われわれは安全だと思っていない」とまったく納得しておらず、沖縄の「安心」には程遠いと言わざるを得ない。
 今年、モロッコと米フロリダ州で発生した墜落事故の調査結果では、米側はいずれも「人為ミス」と結論付け、日本政府も追認したが、逆にフェイルセーフ(多重安全)が脆弱(ぜいじゃく)で、人間に付きもののミスを許さない機体であることを印象づけた。
 回転翼機と固定翼機の特長を併せ持つだけに、双方の欠点も重なり、操縦が難しいという専門家の指摘が説得力を持つ。
 日米が合意した安全確保策も、とても十分とは言い難い。
 回転翼機と固定翼機の中間のような状態で危険性が指摘される転換モードでの飛行は「可能な限り短くする」。ほかに「可能な限り海上を飛行」「深夜、早朝の飛行は必要最小限に制限」。
 「可能な限り」「必要最小限」の文言が並び、米軍の運用を優先する内容になっている。これで沖縄の理解が得られるとは思えない。
 そもそもオスプレイの配備問題は、「日本の安全保障」を理由に、ほぼ一身に基地負担を背負わされてきた沖縄の戦後を凝縮したような経緯をたどった。
 日本政府は遅くとも1996年には、沖縄米軍基地縮小に関する日米特別行動委員会(SACO)などで、普天間の海兵隊輸送ヘリを将来、オスプレイに機種変更する構想について、米側から説明を受けていた。
 しかし、その後の国会審議などでは「配備計画は聞いていない」としてきた。政府が沖縄県に配備計画を知らせたのは、昨年6月に米国が計画を発表してからのことだ。
 この時に米国は日本に対し、外交上の正式な通告である「接受国通報」を出しているが、これは当然、日本側の了解を得てのことだ。沖縄は蚊帳の外に置かれていた。
 オスプレイ配備に関しても、反発を恐れて沖縄と正面から向き合おうとせず、その声に耳を傾けようとしなかった日本政府の安全宣言が「初めに配備ありき」の儀式と映るのは当然だろう。
 米有力紙が最近、普天間配備を急ぐ米政府の姿勢を「沖縄の懸念に耳を傾けねばならない」と批判する社説を掲載した。過重な基地負担に苦しむ沖縄の「傷口に塩を塗り込むもの」とし、配備先の変更を求めている。
 オスプレイの運用をめぐっては、今後も日米の協議が続く。両政府には、米紙が指摘する至極当然な認識を共有することから始めてもらいたい。
 輸送ヘリに比べて5倍以上、約3900キロもの航続距離を生かしてグアムの海兵隊基地などに後退配備し、いざというときに前方展開する―など知恵の絞りようはあるはずだ。それらを普天間返還につなげる努力も重ねてほしい。
 沖縄の声を無視してはいけない。オスプレイの配備をこのまま推し進め定着させるなら、日米同盟は抜きがたいトゲをまた一つ抱えることになる。それは、万一事故が起きたりしたら致命的な傷となる。

[京都新聞 2012年09月20日掲載]
社説:オスプレイ運用  安全宣言は沖縄無視だ
 政府の「安全宣言」をうのみにすることはできない。
 日米両政府は、米海兵隊の新型輸送機オスプレイの日本国内での運用を決め、安全確保策に合意した。墜落の危険性が指摘されながら、通告通りの配備スケジュールを米国側が押し通した。
 配備先の沖縄県では今月、オスプレイに反対する県民集会が開かれ、10万人以上が参加した。米軍普天間飛行場への配備強行は、沖縄の怒りを無視し、今も住宅地の上を軍用機が飛ぶ危険な実態に目をつぶっている。
 政府が米軍側と合意した国内飛行の安全ルールは、安全高度150メートル以上の順守や、原発や史跡、住宅密集地の上空の飛行は回避するとした。「深夜、早朝の飛行は最小限とする」「転換モードでの飛行は、できる限り短くする」などとあいまいな表現が目立ち、実際の運用は抜け道だらけだ。
 これまでも普天間飛行場や米軍嘉手納基地(沖縄県)で、夜間・早朝の飛行を最小限とする日米間の騒音防止協定が結ばれている。だが、宜野湾市によると、夜間・早朝の米軍機離発着は常態化している。
 市がヘリの離発着ルートを観測したところ、防衛施設庁の説明するルートを逸脱し、住宅過密地域の上をたびたび飛行している。本土復帰した1972年以降、普天間飛行場配備の米軍機による事故は87回も発生している。
 こんな安全対策は空証文だと、沖縄の人々は見抜いている。
 米軍は、普天間の安全確保のための約束を裏切り続けてきた。日米地位協定を理由に、日本政府は対米配慮ばかりがにじむ。2010年の普天間爆音訴訟の高裁判決は「国は米軍に調査を求めるなど適切な措置を取っていない」と国の不作為を批判した。政府の安全宣言への沖縄の反発は強い。沖縄県の仲井真弘多知事は「人間の上を飛ばないでほしい」と憤った。
 オスプレイの安全を政府が強調すればするほど、「普天間飛行場は危険」という日米合意の原点が置き去りにされてしまう。それではオスプレイ配備が、普天間飛行場の固定化につながりかねない。
 安全宣言で日本政府は、墜落原因は主に人的ミスと説明した。事故はオスプレイの回転翼を水平飛行と切り替える「転換モード」で多発している。人為ミスの起きやすさは、危険と同義ではないか。
 週内にも岩国基地(山口県)で試験飛行を開始し、10月から普天間に本格配備するという。危険な飛行場に、わざわざ危険な軍用機を配備する道理はない。普天間配備を再考すべきだ。


神戸新聞 (2012/09/20 09:46)
社説:オスプレイ/誰のための「安全宣言」か 
 米軍が沖縄の普天間飛行場に配備する予定の新型輸送機オスプレイについて、政府は「運用の安全性は十分確認された」とする安全宣言を発表した。
 これを受け、米側は12機を一時駐機中の山口県の岩国基地であすにも試験飛行を始め、来月から普天間飛行場に移して本格運用する見通しだ。
 政府による「お墨付き」とはいえ、十分に信用できる安全宣言なのだろうか。事故の懸念は、沖縄や岩国だけでなく全国に広がっている。両政府は、それを払拭する努力を怠ってはならない。
 オスプレイは、ヘリコプターと飛行機の機能を兼ね備えている。開発段階から事故が絶えず、今年に入ってモロッコと米国内で墜落事故が相次いでいた。
 このため、日米両政府が進めてきたのが、2件の事故の原因調査と運用をめぐっての安全確保策である。約2カ月後に出た結果が、今回の安全宣言だ。
 まず構造上の問題について、政府は米側の調査結果を追認する形で「機体の安全に特段の問題はなく、いずれの事故も人的要因が大きい」と結論付けた。
 その上で、再発防止策として訓練の徹底などを挙げるが、人的ミスは起こり得る。求められるのは、ミスを防ぎ、復元するシステムの構築である。
 日米合同委員会が合意した安全確保策も、抜本的な対策とは言い難い。
 沖縄に配備後、全国7ルートで予定される低空飛行訓練は安全高度150メートル以上を順守し、原発や人口密集地を避ける。機体が接近する形の編隊飛行は米軍施設上に限る。病院や学校上空の飛行も極力回避するといった内容だ。いずれも、付け焼き刃的な印象がぬぐえない。
 最大の焦点で、相次ぐ事故の引き金になった回転翼の向きを変える「転換モード」をめぐっては「できるだけ飛行時間を短くする」との曖昧な表現になった。
 当初は、普天間飛行場上空に限定する日本の提案が検討されたが、最終的に米側の主張が通った形だ。米国への配慮をうかがわせる結果といえる。
 これに対し、沖縄県の仲井真弘多知事は「理解不能だ」と述べた。普天間飛行場は住宅地に囲まれた世界一危険な基地である。一つ間違えば大惨事につながる。見切り発車だけは避けるべきだ。
 日米両政府ともオスプレイ配備で「抑止力の向上」を強調する。それが発揮できるのも、安全性が保証されてこそだ。
 誰のための安全宣言なのか。両政府とも、配備される側の沖縄の目線に立って再検討してもらいたい。


山陽新聞 (2012/9/20 8:49)
[社説]オスプレイ 見切り発車の「安全宣言」
 米軍新型輸送機MV22オスプレイの日本国内での運用を認める政府の「安全宣言」が発表された。ただ、日米両政府が合意した安全確保策は「付け焼き刃」の印象が否めず、地元の理解を得られるめども立っていない。米側の計画に間に合わせるための“見切り発車”と言わざるを得ない。
 米側は12機が一時駐機している岩国基地(山口県岩国市)で21日にも試験飛行を始め、10月から沖縄県の普天間飛行場で本格運用する方針だ。
 普天間飛行場のある宜野湾市で今月9日に開かれた配備反対の県民大会には約10万1千人(主催者発表)が参加した。米軍基地をめぐる県民大会としては過去最大規模である。政府の決定は、これらの沖縄県民の不安や怒りの声に応えず、配備を強行しようというものである。
 オスプレイの訓練をめぐって米国内では、ニューメキシコ州とハワイ州の基地で環境への影響や騒音被害を懸念する住民などの反対を受けて、延期や断念が伝えられている。なぜ、沖縄では強行されるのか、県民にとっては割り切れない思いだろう。
 オスプレイは、その独特の構造ゆえに安全性への疑問が指摘されてきた。今年4月に海兵隊仕様のMV22がモロッコで、6月には空軍のCV22が米フロリダ州で墜落事故を起こし、死傷者が出た。さらに今月6日にはMV22がノースカロライナ州の市街地に緊急着陸するトラブルも起きている。
 二つの墜落事故について、米側はいずれも「人為ミス」が原因で、機体に不具合はないと結論づけた。日本側の検証も米側の調査を追認するだけだった。
 国内運用に向けた安全確保策では、全国各地で予定される低空飛行訓練について、通常は米軍機に適用されない航空法の安全高度150メートル以上の高度を順守させ「原発施設や史跡、人口密集地の上空は回避する」とした。
 機体が接近する低空編隊飛行や、ヘリコプターのように回転翼を上向きにする「垂直離着陸モード」の飛行は米軍施設上空に限定し、飛行経路は病院や学校上空を避けて設定、可能な限り海上を飛行するとした。飛行が不安定になると指摘される動作や、低空飛行訓練時の高度に制限を設けるなど一定の配慮を見せた形だが、抜本的な安全策には程遠いといえよう。
 配備される普天間飛行場は、周辺に住宅地が密集して「世界一危険」とされ、移転が計画されている。沖縄県の仲井真弘多知事は「安全宣言」について「理解不能」と述べたのも当然である。
 日本各地での低空飛行訓練には、これまでも使用してきた中国山地を横断するルートも使うとみられている。当初の地上60メートルの想定が、150メートルに制限されるとはいえ、飛行が頻繁に行われる可能性がある。安全策が順守されるかどうかも危惧される。


中国新聞  '12/9/20
社説:オスプレイ「安全宣言」 低空飛行の容認許せぬ
 少し時間をかけただけで、結局は「配備ありき」の米側の言い分をうのみにした格好だ。
 米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、きのう日本政府が「安全宣言」を出した。米海兵隊は週内にも岩国基地を拠点に試験飛行に踏み切った上で、沖縄・普天間基地に持ち込む構えである。
 それでいいのだろうか。沖縄県の仲井真弘多知事は「われわれは安全と思っていない。理解不能だ」と厳しく批判した。無理に進めるなら沖縄の反発がうねりとなり、安全保障政策に禍根を残すことになろう。
 日本政府からすれば、米側と懸命に交渉して譲歩を引き出した、と言いたいようだ。日米合同委員会による合意事項には確かに、日本側に一定の配慮をしたような文言が並ぶ。
 オスプレイの飛行における「垂直離着陸モード」は米軍基地と上空に限る。全国各地での低空飛行訓練は日本の航空法に準じて高度150メートル以上とし、人口密集地や病院・学校などは避ける―などである。しかし安全性に関する根本的な疑問は解消されていない。
 何より設計の不備を指摘する米国内の専門家の声を無視し、機体自体に問題がないと決めてかかっているようにみえる。
 仮に米軍の主張通り、相次ぐ墜落事故が全てパイロットの人為ミスだったとしよう。では、再発防止の訓練は十分なのだろうか。「日本においても訓練を継続する」といった合意内容では不安になってくる。
 決まったコースを飛ぶ民間機に比べ、もともと軍用機の運用は訓練を含めてリスクを負う。時に想定外の無理な飛び方も求められるからだ。その点をあいまいにして安全と言い切るのは詭弁(きべん)に聞こえる。
 もう一つ見過ごせないのは、日本政府がオスプレイの本土側の低空飛行訓練をあっさり容認したことだ。列島各地に米軍が一方的に設定している6本の飛行ルートのほか、西中国山地の訓練空域「エリア567」なども使用される可能性がある。
 これらの地域での米軍機の訓練に対し、広島県などが長い間、日米両政府に抗議を続けてきたことをどう考えているのだろう。飛行ルートが日本政府公認になったとばかりに、戦闘機など他の機種も含めた訓練がエスカレートする恐れはないか。
 さらにいえば、たとえ高さ150メートル以上で飛んだとしても相当な騒音と恐怖感をもたらすのは間違いない。人口密集地などの回避にしても13年前に日米で申し合わせた話だ。なのに一向に守られていない現実がある。
 今回の合意も、基本的には努力義務にすぎず、米軍の腹一つで形骸化しかねない。
 このまま配備され、訓練が始まった段階でどこかで事故が起きればどうなるか。
 日米安保体制の信頼性は揺らぎ、日本政府の責任が厳しく問われよう。そこまでの覚悟が求められることを野田佳彦首相はもっと認識する必要がある。
 まずは岩国の試験飛行を強行すべきではない。だが山口県知事も岩国市長も沖縄の反発に比べると若干歯切れが悪かった。
 全国知事会も7月、オスプレイ配備に懸念を表明する異例の決議をしている。もはや沖縄や岩国だけの問題ではないことを忘れてはならない。

徳島新聞 2012年9月23日付
社説:オスプレイ初飛行  配備ありきで強引すぎる
 山口県岩国市の米軍岩国基地に一時駐機している新型輸送機MV22オスプレイの試験飛行が始まった。巨大なプロペラを回した最新鋭機が、ごう音を残して飛び立つ姿を住民はどんな思いで見ただろう。
 日本政府が配備に向けた「安全宣言」を出してからわずか2日後だ。安全性に対する不安が払(ふっ)拭(しょく)されないままでの試験飛行だった。
 米軍は早ければ28日から順次、配備先の米軍普天間飛行場に移動させ、10月から本格運用を開始する方針だ。日米両政府は自ら描いたスケジュールに沿って、拙速で強引に事を進めているように見える。
 危険極まりない普天間飛行場を抱える沖縄県で、怒りが渦巻いている。当然のことだ。沖縄の民意を軽視した進め方に憤りを覚える。
 仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)知事は「県民挙げて反対だと強くアピールしているにもかかわらず『配備ありき』的なやり方でどんどん進めている印象が強い」と不快感をあらわにした。沖縄の人たちの思いを代弁する言葉だ。
 配備後は国内各地で低空飛行訓練が予定されている。徳島をはじめ不安を抱く関係自治体は多い。政府は安全性に対する住民の納得が十分得られるまで、米側に配備の凍結を要求すべきだ。
 藤村修官房長官は記者会見で、国内配備の意義や安全性について、あらためて地元に理解を求める考えを示した。だが、7月23日の機体搬入後の経緯を見る限り、慎重さに欠けているのは否めない。政府に対する不信感は容易にぬぐえまい。
 そもそも、今回の試験飛行の根拠となった安全宣言の中身には疑問が尽きない。
 日米両政府が合意した安全策は、高度150メートル以上で飛ぶことや人口密集地の上空を回避することが柱になっている。
 機体が接近する低空編隊飛行は米軍施設上空に限定。飛行経路は病院や学校上空を避けて設定し、可能な限り海上を飛行する。普天間での騒音対策として深夜、早朝の飛行は最小限にする、などとした。
 飛行が不安定になると指摘されている回転翼を前に傾けた「転換モード」での飛行時間もできる限り短くするとしている。しかし、あいまいな表現が目に付き、抜本的な安全策には程遠いと言わざるを得ない。
 普天間飛行場の移設が計画されている名護市の稲嶺進市長は「米軍はこれまで事前合意を守ったことがない。訓練高度などの安全策を米軍が順守するとは到底考えられない」と述べている。これまでも約束事は破られており、今回も守られる保証はないとの思いが強いのだろう。
 沖縄県の尖閣諸島や島根県の竹島をめぐり、中韓両国との関係が緊張しているだけに、日米同盟のきしみは避けたいところだ。
 とはいえ、万一、事故が起きれば取り返しがつかないことになる。日米両政府は沖縄の声に耳を傾けなければならない。このままでは沖縄との溝はいつまでも埋まらない。
 野田政権は東アジアの安全保障体制を含め、オスプレイの運用について、米側といま一度しっかりと話し合ってもらいたい。


愛媛新聞 2012年09月23日(日)
社説:オスプレイ飛行強行 努力規定で安全は守れない
 いったい日本の空は誰のものなのか。
 米海兵隊は山口県の岩国基地に一時駐機させている新型輸送機MV22オスプレイの試験飛行を始め、いきなり下関市街地上空を横切った。沖縄の人々が島ぐるみで拒絶し、訓練ルートにされる全国各地でも反対や懸念の声が上がっているにもかかわらずだ。
 試験飛行に先立ち、日米両政府はオスプレイの国内運用に関する安全確保策で合意。日本政府は「安全性は十分確認された」と宣言したが、いずれも米軍主張追認の域を出ていない。米軍は10月から沖縄の普天間飛行場に配備して本格運用し、愛媛上空を含む国内7ルートでも低空飛行訓練させる方針だ。
 日程ありき、配備ありきと言わざるを得ない。
 オスプレイは相次ぐ重大事故で30人以上の死者を出し、構造的な欠陥が指摘される問題機種だ。ことしもモロッコと米国で墜落し、死傷者を出している。国民の命より軍の論理を優先した、日米両政府による試験飛行強行を容認することはできない。国内で住民を巻き込む重大事故が起きてからでは手遅れだ。
 安全宣言では、2件の事故を「人為ミス」と結論づけた米軍調査をなぞり「機体の安全に特段の問題はない」とした。ならば、なぜ事故が相次ぐのか。ヘリコプターと固定翼機の機能を併せ持つオスプレイは、回転翼を前に傾けた「転換モード」で飛行が不安定になると指摘されている。事故の頻発は、人為ミスが墜落に直結しやすい欠陥を物語っているのではないか。
 まして、配備先は住宅密集地の真ん中にあり「世界で最も危険」と言われる普天間飛行場だ。それなのに、日米で合意した運用ルールは「できる限り学校や病院上空を避ける」「可能な限り水上飛行」「固定翼機と回転翼機の転換モード飛行をできる限り短くする」などと、米軍に判断を委ねた努力規定が並ぶ。
 愛媛にも関わる低空飛行訓練では、航空法にも定められた最低安全高度150メートルを守るとしながら「その高度を下回る飛行をせざるを得ないこともある」と、最初からザルのような取り決めだ。
 疑問が拭えない機種そのものの構造的な問題点、米軍任せの運用ルール。このままオスプレイの普天間配備を強行すれば、沖縄の危険を増大させるとともに、16年間放置されてきた普天間基地の返還をさらに遠のかせかねない。
 沖縄では今月9日、オスプレイ配備撤回と普天間基地撤去を求める10万人超の県民集会が開かれた。米軍の言い分そのままの安全宣言と試験飛行容認は、沖縄の思いを踏みつけ、戦前から続く沖縄への構造的差別をさらに強めるものだと政府は気づくべきだ。


高知新聞 2012年09月20日08時53分
社説 :【安全宣言】配備ありき、に欠ける視点
 米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの国内運用に関し、日米合同委員会はきのう、安全確保策で合意し、森本防衛相、玄葉外相は「安全宣言」を発表した。
 これを受けオスプレイは山口県・岩国基地での試験飛行を経て、10月中に普天間飛行場に本格配備される。
 しかし、地元沖縄県などでは理解どころか、むしろ反発が強まっている。配備ありき、のような日米両政府の対応は新たな火種を残した。
 合同委が合意した安全確保策は、危険性のある低空編隊飛行や「垂直離着陸モード」での飛行は米軍施設上空に限定する。全国各地で予定される低空飛行訓練は航空法の安全高度150㍍以上を順守させ、人口密集地の上空は回避する、といった内容だ。
 森本防衛相は「オスプレイの安全性は十分確認された」と胸を張るが、この内容だと本県の嶺北地方など人口の少ない中山間地帯は、訓練コースであることを正当化されてしまう。
 飛行の高度、コースを工夫すれば安全は確保できるとの発想のベースは、米国内などでのオスプレイ墜落事故を調査した防衛省チームの報告書だ。いずれの事故も機体に不具合はなく「人的要因が大きい」と結論付けた。
 機体の構造に問題がないとすると、後はパイロットの訓練を強化し、飛行方法を改善すれば事故は防げる。これが合同委の考えであろう。
 今回の「安全宣言」に対し、沖縄県の仲井真知事は「われわれは安全だとは思っていない。あんな住宅密集地に持って来て」「人間の上を飛ばないでほしい」と反発する。
 過去にはヘリコプターが墜落した住宅密集地にある普天間飛行場へのオスプレイ配備に異を唱えているのだ。在日米軍再編の原点は普天間飛行場の危険性除去であり、それを忘れるな、との訴えは先日、配備反対の10万人集会を開いた県民の思いにも通じる。
 オスプレイにはエンジン停止で降下した場合、揚力を発生させて安全に着陸させる機能が欠如している、との指摘が出ている。こうした構造上の不安は拭われていない。
 米紙ニューヨーク・タイムズはオスプレイの普天間配備に関する社説で、配備は過重な基地負担に苦しむ県民にとって「傷口に塩を塗り込むようなものだ」と指摘した。安全宣言にはこの視点が抜け落ちている。


=2012/09/20付 西日本新聞朝刊=
社説: オスプレイ 沖縄無視の配備は無理だ
 2人の大臣がそろって「安全」とお墨付きを出した。しかし、その証文にどれだけ説得力があるのかが問題だ。
 日米両政府は19日、米軍新型輸送機MV22オスプレイの日本国内運用に関し、運用時の安全確保策で正式合意した。
 これを受けて、森本敏防衛相と玄葉光一郎外相が並んで記者会見し、「オスプレイの運用の安全性は十分確認された。わが国における飛行運用を開始させる」とする「安全宣言」を発表した。
 米国側は、オスプレイを一時駐機している山口県の岩国基地で近く試験飛行を開始し、10月から沖縄県の普天間飛行場で本格運用する方針だ。
 オスプレイは開発段階で4回の重大事故を起こして30人が死亡したほか、今年4月に海兵隊仕様のMV22がモロッコで、6月には空軍仕様のCV22が米フロリダ州でそれぞれ墜落し、死傷者が出た。
 このため、安全性に疑問があるとして、配備先となる沖縄県で激しい反対運動が起きている。
 宣言では、モロッコとフロリダでの事故の調査結果として「人為ミスが原因」とした米側調査を追認し「機体の安全性に特段の問題はない」と結論付けた。
 しかし「機体に問題なし」の結論を認めたとしても、「だから安全」ということにはならない。特定の機種で人為ミスが続発すること自体が危険なのである。
 また、安全確保のための運用ルールとして、航空法が定める安全高度150メートル以上で飛ぶことや、人口密集地では低空飛行訓練をしないことなどを盛り込み、地元に配慮する姿勢をみせてはいる。
 だが、こうした安全策が順守される保証があるのか、疑問が残る。沖縄の基地周辺で結ばれている騒音防止協定には夜間飛行制限の努力規定があるが、実際には夜間の離着陸が常態化している。
 今回の運用ルールにも「可能な限り」「運用上必要な場合を除き」など、米軍の判断次第だと読める表現が並んでいる。確実に守らせる担保がなければ、ルールも空文化しかねない。
 沖縄では今月9日、オスプレイ配備に反対する県民大会が開かれたばかりだ。10万1千人(主催者発表)が参加し、配備計画の撤回と普天間飛行場の閉鎖を求める決議を採択した。
 仲井真弘多知事は19日、「われわれは安全だと思っていない。しかもあんな(人口)密集地に持ってきて理解不能だ」と批判した。政府の「安全宣言」も、沖縄を納得させることはできないようだ。
 沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国との摩擦が強まっていることを背景に、政府は日米安保体制の重要性を強調することで、オスプレイ配備を進める構えだ。
 しかし、これ以上基地の負担を押しつければ、沖縄は忍耐の限界を超えかねない。配備強行は日米両政府への県民の不信を増大させ、かえって日米安保を損ねる。オスプレイも含めた基地負担の分散を、真剣に考えるべき時がきている。


佐賀新聞 2012年09月25日
論説:「オスプレイ安全宣言」普天間返還への努力を
 米軍の新型輸送機MVオスプレイについて、日本政府が安全を宣言した。尖閣問題をめぐって中国との関係が悪化したことを背景に、日米同盟の堅持を優先させた形だが、配備先の普天間飛行場がある沖縄県の納得は得られそうにない。
 オスプレイはヘリコプターと飛行機の特長を併せ持ち、中型輸送ヘリに比べて最大速度で2倍、輸送力で3倍、航続距離は6倍の性能を持っているという。老朽化した輸送ヘリに代えて、米海兵隊を含む在日米軍全体の抑止力のアップを狙っている。
 配備自体は日本の防衛体制を強固にするものの、機体の安全性に懸念が持たれている。今年4月にモロッコで、6月には米国内で墜落事故が発生した。米側は「人為ミス」と結論付け、機体の構造的な問題を否定した。日本政府も「機体の安全に特段の問題はない。安全性は十分確認された」と判断し運用開始を容認した。
 2度の墜落が人為ミスであるとしても、不安が消えるわけではない。むしろ事故が起こりうる前提で安全確保策を幾重にも取る必要があるだろう。政府の安全宣言では、人口密集地の上空は飛ばず、ヘリと飛行機の中間の「転換モード」で飛ぶ時間を可能な限り短くするなどとしている。
 日米安全保障条約上、日本政府にオスプレイ配備を拒否する権限はなく、野田佳彦首相は当初、「配備自体はどうしろ、こうしろという問題ではない」と発言して野党などから批判を受けた。法的にはそうであっても、国民の安全を守るため交渉に全力を尽くすのは、政治家の重要な仕事であるはずだ。
 両政府の協議は7月末から始まり、2カ月かけて安全確保策をとりまとめた。緊急時に備えて、できるだけ制限を減らしたい米側と、沖縄などの反発を少しでも和らげたい日本側で、せめぎ合いがあったという。「可能な限り」「必要最小限に」などあいまいな表現が多いのは、米軍の運用を優先せざるを得なかった事情を物語っている。
 沖縄県の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事は安全宣言に納得しておらず、地元の理解が得られないままでは“見切り発車”と言わざるを得ない。日本にある米軍専用基地の74%が集中している沖縄と向き合わず、米軍のスケジュール通りに運ぶ姿勢は、新たな基地負担の押しつけと映るだろう。
 普天間の周囲には住宅が密集、今でも危険な状態にある。日米政府は16年前、移転・返還に合意したが、鳩山政権時にもつれさせてしまった。米軍再編計画の中で沖縄駐留の海兵隊の一部移転や施設の補修計画が浮上しており、このまま普天間が「固定化」する恐れも高まっている。
 政府はオスプレイ配備に問題を矮小(わいしょう)化せず、普天間返還につなげる努力を続けてほしい。米軍は一時駐機している岩国基地(山口県)の飛行訓練を短期で切り上げ、近日中にも普天間に移動させ10月から本格運用する計画だ。
 米軍が検討しているオスプレイの飛行訓練ルートは、東北から九州まで七つ。関係する自治体は幅広くなった。日米協議で超低空の訓練はしないことになったが、安全宣言に盛られた取り決めが守られるのか保証はない。ただ、安全宣言によって日本政府も責任を担うことになったのは明らかだ。(宇都宮忠)

熊本日日新聞 2012年09月24日
社説:オスプレイ配備 沖縄県民の安心には程遠い
 政府は米軍の新型輸送機オスプレイについて「安全性は十分確認された」と宣言した。これを受け米海兵隊は岩国基地(山口県岩国市)で試験飛行に入り、10月上旬の普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)配備を目指しているが、沖縄県民の安心には程遠いと言わざるを得ない。
 オスプレイは回転翼機と固定翼機の機能を併せ持ち、ヘリコプターのように垂直離着陸し、飛行機のように高速で長距離を移動することができる。米海兵隊は2013年までに24機を普天間に配備する計画。現在、岩国の12機が準備のための飛行を繰り返している。
 安全性を確認する日米合同委員会で米側は、モロッコと米フロリダ州で今年起きた墜落事故についていずれも「人為ミス」と結論付け、日本政府も追認した。だが、このことは逆に人間に付き物のミスに即応する安全装置が脆弱[ぜいじゃく]であることを物語るのではないか。実際、これまでオスプレイの墜落事故で30人以上の兵士が死亡し、比較的軽度のものを含めた事故率でも海兵隊航空機の平均を大きく上回っている。
 安全宣言の根拠について森本敏防衛相は、(1)150メートル以上の高度で飛行する(2)深夜・早朝の飛行を制限する(3)学校、病院などのある住宅密集地上空を避ける(4)機体が不安定になりやすい飛行モードの転換は基地上空に限る、など日米合意の内容を列挙した。しかし、いずれも「できる限り」「運用上必要な場合を除き」といった表現が付いており、米側の判断に委ねられるのが実態ではなかろうか。
 沖縄県の仲井真弘多[なかいまひろかず]知事は「われわれは安全だと思っていない。県民の不安が払拭[ふっしょく]されるまでやむなしとは言えない」と配備拒否の姿勢を崩していない。沖縄の人々にとって政府の安全宣言が「初めに配備ありき」の儀式と映るのも当然だろう。23、24日に予定されていた森本防衛相の沖縄訪問が県側の意向で見送られたため、同相は今週中の訪問実現を目指すとされる。単なるスケジュールの消化であるなら、さらに不信感を増幅させかねない。
 強調しておきたいのは、オスプレイは米国内でも敬遠されていることだ。今年に入ってニューメキシコ州のキャノン空軍基地では低空飛行訓練、ハワイ州の2空港では着陸訓練が相次ぎ延期された。いずれも住民から環境、騒音、安全面での懸念の声が上がったからだ。
 米紙ニューヨーク・タイムズも最近、普天間配備を急ぐ米政府の姿勢を「沖縄の懸念に耳を傾けねばならない」と批判する社説を掲載した。過重な基地負担に苦しむ沖縄の「傷口に塩を塗り込むもの」として、配備先の変更を求めている。
 日米は知恵の絞りようがあるのではないか。輸送ヘリに比べて5倍以上ある航続距離を生かしてグアムの海兵隊基地などに後退配備し、いざという時に前方展開するというプランを主張する声もある。要は普天間の固定化でなく、返還につなげる方向で問題解決を図るべきだ。
 全国に七つあるとされる低空飛行訓練ルートのうち一つは、熊本県東部を通過する。県民も関係自治体も注視していきたい。


宮崎日日新聞 2012年09月23日
社説:オスプレイ試験飛行開始 「安全宣言」は安心できない
 政府が安全を宣言した米軍の新型輸送機MV22オスプレイが、米軍岩国基地(山口県岩国市)で試験飛行を始めた。今月中には普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備される予定だ。
 岩国基地周辺では多くの市民が抗議の声を上げ、沖縄県の仲井間弘多知事も「安全だとは思っていない」と、配備にはまったく納得していない。
 モロッコと米フロリダ州で今年起きた墜落事故の調査結果では、米側はいずれも「人為ミス」と結論付け、日本政府も追認した。これで政府の安全宣言だから、「初めに配備ありき」としか思えない。安心には程遠いと言わざるを得ない。
■操縦難しいとの指摘■
 回転翼機と固定翼機の特長を併せ持つオスプレイは、双方の欠点も重なり、「操縦が難しい」と専門家が指摘するところだ。
 日米が合意した安全確保策では、回転翼機と固定翼機の中間のような状態で危険性が指摘される転換モードでの飛行は「可能な限り短くする」という。ほかに「可能な限り海上を飛行」「深夜、早朝の飛行は必要最小限に制限」としている。
 「可能な限り」「必要最小限」といった文言が並び、米軍の運用を優先する内容になっている。とても十分とは言い難く、沖縄の理解が得られるはずがない。
 沖縄や山口だけではない。今後の低空飛行訓練のルートには本県を含む九州山間部、本州北部、四国も入っている。沖縄でこれまで発生したジェット機やヘリコプターの墜落事故を思い出せば、強い不安を感じる国民は多いはずだ。
■沖縄の声無視するな■
 政府は遅くとも1996年には、普天間のヘリを将来オスプレイに変更する構想について米側から説明を受けていた。しかし、その後の国会審議などでは「配備計画は聞いていない」とし、政府が沖縄に知らせたのは米国が配備計画を発表した昨年6月のことだ。
 その後も政府は沖縄の反発を恐れて正面から向き合おうとせず、その声を聞こうとしなかった。
 米有力紙が最近、普天間配備を急ぐ米政府の姿勢を「沖縄の懸念に耳を傾けねばならない」と批判する社説を掲載した。過重な基地負担に苦しむ沖縄の「傷口に塩を塗り込むもの」とし、配備先の変更を求めている。
 日米両政府は、米紙が指摘する当たり前の認識を共有することから始めるといい。
 輸送ヘリに比べ5倍以上、約3900キロもの航続距離を生かしてグアムの海兵隊基地などに後退配備し、いざというときに前方展開するなどの知恵の絞り用はあるはずだ。そして、それらが普天間返還につながるよう努力すべきだ。
 オスプレイの配備をこのまま推し進め、万が一事故が起きたとしたら、日米同盟は致命的な傷を抱えることになる。沖縄の声を無視してはいけない。


南日本新聞 ( 2012/ 9/20付 )
社説:[オスプレイ] 疑問を残した安全宣言
 政府は、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの日本国内運用に関し「危険と考える根拠は見いだし得ない」とする「安全宣言」を発表した。
 これを受け米軍は、オスプレイを一時駐機している岩国基地(山口県岩国市)での試験飛行を週内にも開始し、10月から沖縄の米軍普天間飛行場で本格運用したい考えだ。
 しかし、沖縄県の仲井真弘多知事は「われわれは安全だとは思っていない」と述べ、県としては納得していない姿勢を強調した。地元の不安をよそに、今年10月の沖縄配備という米軍のスケジュールに合わせたかのような安全宣言に反発を強めるのは当然だ。
 安全宣言に先立ち、日米両政府はオスプレイの日本国内での運用に関し、外務、防衛当局者による日米合同委員会を開き、低空飛行訓練時の高度制限などを柱とする安全確保策で合意した。
 沖縄配備後に全国各地で予定される低空飛行訓練について、米軍機には通常適用されない航空法の安全高度150メートル以上の高度を順守し、原発施設や史跡、人口密集地の上空は回避する。
 今年6月に米フロリダで起きた事故は2機が前後する位置で飛行中に発生したことから、機体が接近する低空編隊飛行は米軍施設上空に限定する。飛行経路は病院や学校上空を避けて設定し、可能な限り海上を飛行する。普天間の騒音対策として深夜、早朝の飛行は最小限とする-などである。しかし、周辺に住宅が密集する普天間でこうした安全確保策に実効性があるとは思えない。
 なにより問題なのは、安全宣言が「機体の安全に特段の問題はない」としたオスプレイの安全性に疑問が残っていることだ。根拠となったフロリダでの墜落事故についての米報告書は、「すぐ前を飛んでいた飛行機から受ける気流への対応を誤った事故機の操縦士らの人為ミス」として、機体の危険性を否定した。
 飛行に習熟した技術が必要な複雑な機種なのだろうが、墜落事故が多発している現実は否定しようがない。こうした問題への対応策を示さないまま受け入れを求めるのでは、地元が不安を払拭(ふっしょく)できないのは自然なことである。
 沖縄県はオスプレイの運用などについて防衛省に質問状を提出している。その回答の前に安全宣言が出されたことについても、仲井真知事は「いかがなものか」と不快感をあらわにした。地元への配慮を欠いたまま、配備ありきの安全宣言や日米合意では受け入れようがあるまい。

沖縄タイムス 2012年9月20日 09時47分
社説:[オスプレイ安全宣言]民意踏みにじる暴挙だ
 政府は、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの日本国内での運用に正式にゴーサインを出した。
 森本敏防衛相と玄葉光一郎外相は19日、官邸で記者会見し、「オスプレイの運用の安全性は十分確認された」と、事実上の安全宣言を発表した。21日から山口県・岩国基地で試験飛行を開始し、10月から普天間飛行場で本格運用する方針である。
 「安全性が十分確認された」とは、よくもまあ言ったものだ。事故が起きたとき、一体誰が、どのように、責任を取るつもりなのか。
 できるだけ規制を設けず自由に運用したい米軍と、地元説得のため目に見える規制を打ち出したい日本政府。今回、日米合同委員会でまとまった安全確保策は、あれやこれやの合意事項を集め、努力の跡が見えるように繕ってはいるものの、合意内容が順守される保証は何もない。
 そもそもオスプレイ配備は、自家撞着(どうちゃく)に満ちている。普天間での運用がほんとに安全であれば、巨額の税金を投じて辺野古に移設する必要はないはずだ。16年前、日米が返還に合意したのはなぜか。市街地のど真ん中に位置する普天間飛行場の危険性を認め、一日も早い危険性の除去と負担軽減を実現するためだ。
 なのに、普天間でのオスプレイ運用を「安全」だと強弁し、長期使用を想定して滑走路の改修計画まで立案するのは、自家撞着である。政府の負担軽減策は破綻した。
 現在、進行している事態は負担の軽減ではなく負担の継続強化、危険の拡大である。
■     ■
 日本政府はこれまで、オスプレイ配備について、ウソと隠蔽(いんぺい)を重ねてきた。
 日米交渉の場で政府は、交渉結果を外部発表する際、オスプレイの表記を見合わせるよう米側に求めた。国会質疑でも、知らぬ存ぜぬ、を通し続けた。オスプレイ配備の事実は環境影響評価(アセスメント)の最終段階になって、ようやく評価書の中に盛り込まれた。
 低空飛行訓練について安全確保策は、米軍機には適用されない航空法の安全高度150メートル以上の高度を順守し、「人口密集地は回避する」としている。回転翼を上向きにする「ヘリモード」の飛行は米軍施設上空に限定し、回転翼を前に傾けた「転換モード」での飛行時間は、飛行が不安定になるためできる限り短くする、という。
 オスプレイは「ヘリモード」で飛行しているときやモード転換時に事故が起きやすいといわれている。机上の合意通りに運用されるとは限らない。この種の合意で「安全性が十分に確認された」と結論づけるのは早計だ。
■     ■ 
 政府と地元沖縄の関係は、1996年の普天間返還合意以来、最悪の状態である。
 県民大会直後に事実上の「安全宣言」を発表し本格運用を認めたことは、住民の切実な声を土足で踏みにじるものだ。
 基地の負担は本来、全国で公正に負担すべきなのに、それさえ実現できない政府とは一体、何なのか。

沖縄タイムス 2012年9月18日 09時55分
社説:[日米防衛相会談]県民の声は届いてない
 森本敏防衛相とパネッタ米国防長官による日米防衛相会談が17日、東京で開かれた。
 主な議題は、米軍機オスプレイの普天間飛行場配備で、尖閣諸島の領有権問題も会見で取り上げられた。県民にとっては、どれも生活に直接かかわる問題だ。だが、日米防衛相会談は、県民の不安に応える内容にはなっていない。
 会談では、オスプレイの運用のあり方について日米合同委員会で詰めの作業を急ぎ、早期合意を目指すことを確認した。日米合意を受けて山口県・岩国基地で試験飛行を実施し、そのあと普天間に本格配備する段取りだ。
 パネッタ長官は「地元の懸念を踏まえ安全な運用に十分配慮したい」と言う。だが、この種の日米合意が、いかに実効性に欠けるものであるかは、そこに住む住民が一番よく知っている。
 森本防衛相に至っては、民間出身の気負いからか、普天間飛行場の辺野古移設について「確固たる決意をもって進めていく」と強調する始末。地元の頭越しには進めない、という負担軽減の原則を知らないのだろうか。
 民意を無視して強行すれば、それは押しつけであって、負担軽減とは言わない。
 9日の県民大会では、お年寄りから子供まで、世代を超えて10万人(主催者発表)もの人たちが「オスプレイ・ノー」の声を上げた。
 安保条約に賛成する人たちも、この種の大会に参加したことのない人たちも、子供や孫のために駆けつけ、声を上げた。その切実な声を大臣が無視するようでは、民主主義も何もあったものではない。
 県民大会で共同代表を務めた翁長雄志那覇市長は、大会決議を政府に要請したあと、記者会見に臨んだ。
 「正直言って(県民の思いを)受け止めていないと思う」「事故率や原因究明の理由づけを見ると間違いなく落ちる。皮膚感覚で知っている」
 翁長市長は、日米安保体制を容認する、れっきとした保守政治家である。その人が、政府の型通りの対応に不信感を募らせ、怒りを爆発させたのである。
 米紙ニューヨーク・タイムズは、県民の懸念や不安を社説で取り上げ、過重な基地負担に苦しむ沖縄県民にとってオスプレイの配備は「傷口に塩をすり込むものだ」と厳しく批判した。
 自国の大臣よりも自国の大手メディアよりも、米国の有力紙のほうが沖縄に寄り添い沖縄の現実を深く理解している-それが、沖縄から見える日本の姿だ。
 パネッタ長官は尖閣の領有権問題について「相対する主権に関する紛争には、肩を持たない立場だ」と中立性を強調した。中国で大規模な反日デモが吹き荒れた翌日に、同盟国の首都で、あえて中立だと語ったのである。
 オスプレイと尖閣問題を結びつけ、配備を正当化するのは、現実のリアルな認識を欠いた議論というほかない。
 日米関係を安定させることは、抑止力の向上につながる。だが、民意に反してオスプレイ配備と辺野古移設を強行すれば、日米関係は長期的に不安定になるだろう。


琉球新報 2012年9月22日            
社説:試験飛行を強行 落ちない保証にはならぬ
 とうとう飛んでしまった。普天間飛行場に配備が予定されている米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが一時駐機されている山口県の岩国基地で試験飛行が強行された。
 県民大会で10万3千人が反対の意志を示してから、わずか12日後だ。この国は住民の声に耳を傾けることより、米国の言うことに従う植民地なのか。まともな民主主義国家とは到底思えない。
 試験飛行が強行されたのは森本敏防衛相と玄葉光一郎外相が19日に発表した「安全宣言」が根拠となっている。防衛省が同時に発表した資料を読んでみると、これで一体どうして安全だと言えるのかと強い疑問が湧き起こる。
 エンジンが停止した場合に回転翼の揚力だけで着陸するオートローテーション(自動回転飛行)機能について「MV―22は回転翼と比較すれば降下率は高く機体損傷の可能性は排除されないものの、オートローテーション機能は有していることを確認」と記している。
 しかし資料には高い降下率によって「着地した時は時速130キロ」とある。自動車の衝突事故なら、この速度は激突だ。墜落と呼ぶほかなく、元主任分析官も「着地時の速度が速ければ助かる可能性は低くなる」と本紙に答えている。これで安全などとどうして言えるのか。虚構以外の何物でもない。
 米軍は自動回転飛行を模擬訓練でしか実施していない。関係自治体首長に体験搭乗が呼び掛けられていることに、翁長雄志那覇市長は自動回転飛行を実機訓練で実施するのなら森本防衛相とともに搭乗すると明言した。翁長市長の指摘を待つまでもなく、「安全宣言」を行った防衛相と外相は身を持って搭乗し、自動回転飛行を実機訓練で体験する用意はないのだろうか。
 森本氏は23、24日に来県して知事や県内の関係首長と面談し、政府の安全確保策を説明する予定だった。しかし県側が試験飛行の強行を理由に延期を求めた。県民感情からすれば県の要求は当然だ。聞く耳を持たない防衛相はオスプレイと同様に、沖縄にとっては“招かれざる客”であることを自覚してもらいたい。
 仲井真弘多知事が安全確保策について「全てが米軍の意のまま。経験から言えばあんまり守られないことが多い」と批判した。同感だ。政府は試験飛行を即座に中止し、沖縄配備を断念すべきだ。

琉球新報 2012年9月20日            
社説:「安全宣言」と沖縄 「空飛ぶ恥」を飛ばすな
 日本の戦後の基軸をなしてきた日米安全保障体制は、その土台を支えてきた沖縄から崩壊しかねない危機的な状況を迎えた。
 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米軍普天間飛行場への配備をめぐり、政府は見切り発車で「安全宣言」を出した。努力規定ばかりで実効性が乏しい代物である。安全だと納得する県民はいまい。
 日米両政府は、21日にも一時駐機先の山口県岩国基地で試験飛行を始め、沖縄への配備を遮二無二強行しようとしている。
 ごく限られた地域に、他の大多数の地域が恩恵を受ける安全保障の犠牲を負わせ続け、その重圧に苦しむ人々の叫びを無視して恥じない為政者の姿がくっきりした。
 仲井真弘多知事は「今の首相、今の政府が責任を全て持つということだ」と突き放し、翁長雄志那覇市長は「日本が沖縄に甘えているのではないか」と問い掛けた。
 もはや、沖縄と政府の溝は埋め難い。基地に向けた県民のまなざしは敵意を帯び始めた。
 万が一、県民の命を脅かす事故が起きれば、沖縄の民意はたちどころに日米安保の根幹と在沖基地閉鎖に矛先を向けるだろう。
 基地の島・沖縄からは、この国の成熟度がよく見える。統治機構の差別的対応をもはやこれ以上甘受できない。国際社会に向けて、より強く、より徹底的に日米の差別的政策を告発せざるを得ない。
 普天間飛行場の県内移設とオスプレイの配備をめぐり、県知事と全41市町村長が反対し、県議会と全市町村議会が反対を決議した。
 県民は、間接民主主義の手立てを誠実に尽くした。そして、直接民主主義を生かす手法として、10万人超が結集した県民大会を催し、強固な意思を発信した。それからわずか10日しかたっていない。
 沖縄には生身の人間が住み、声を上げている。決して政治的無人島でも植民地でもない。だが、日本政府の処し方は、米国の意向一辺倒に物事を進める呪縛にとらわれている。
 米メディアが「空飛ぶ恥」と称したオスプレイの配備強行は、沖縄への構造的差別を帯び、民主主義の価値を破壊する愚行である。
 だが、私たちは諦念を抱いたり、打ちひしがれることはない。日米の厚い壁を崩すため、ためらわず、粘り強く自己決定権を取り戻す主張を続けたい。民主主義の正当性は沖縄の側にある。

琉球新報 2012年9月19日            
社説:安全確保策を了承 命差し出す配備あり得ぬ
 沖縄の民意を踏みにじってでも米国の言いなりのまま物事を進めるこの国の為政者の姿に失望感を禁じ得ない。県民が配備反対を訴えている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、野田佳彦首相が国内運用に向けた安全確保策を了承した。国内での飛行にお墨付きを与えたことになる。口先だけの「安全確保」で配備を強行することは理不尽以外の何物でもない。
 安全確保策で挙げている事項をみると、回転翼を上向きにする飛行は基地上空に限定し、飛行が不安定になる転換モードの飛行時間はできる限り短くし、住宅密集地上空の飛行は極力避けると記している。実効性があるとは到底思えない。深夜・早朝飛行は必要最小限にすると書かれた騒音対策もしかりだ。
 海兵隊が普天間飛行場配備に向けた環境審査書には上向き飛行は「基地内」どころか飛行場から約1・8キロ離れた場所から実施することが明記されている。転換モードの飛行も飛行場の約5キロ先から始めることが記されており「時間はできる限り短く」には程遠い。
 航空機の特性を踏まえて念入りに想定して実現可能な飛行形態として示したであろう審査書の記述を短期間の日米協議の議論でこんなにも簡単に変更できるのだろうか。甚だ疑問で、県民を説得するためだけの詭弁(きべん)としか思えない。
 また「深夜・早朝飛行は最小限にする」とあるが、県民からすれば噴飯ものだ。午後10時から翌日午前6時までの飛行を制限するとの日米合意の騒音規制措置があるにもかかわらず、現在でも夜間飛行は常態化しているからだ。
 さらに環境審査書ではオスプレイの夜間早朝飛行を年間280回実施すると表明している。規制措置をこれまでも形骸化させ、さらに審査書では無視すると公言した組織が飛行制限に取り組むと言われて、誰が信用できるだろう。
 「米国は沖縄の負担軽減の義務があり、県民の不安に耳を傾けるべきだ。それは配備先を(沖縄以外の)別の場所にすることから始まる」。首相から聞きたかった言葉だが、残念ながら県民に心を寄せたのはニューヨーク・タイムズの社説だ。首相は絵に描いた餅のような安全確保策で沖縄に配備できると思っているのなら、大間違いだ。県民は決して配備を認めないし、命も差し出さない。


しんぶん赤旗 2012年9月20日(木)
主張:オスプレイ「安全宣言」 アメリカいいなり極まった
 米海兵隊が沖縄の普天間基地に配備を予定している新型輸送機オスプレイについて、日本政府が「運用の安全性は確認された」と一方的に宣言し、「飛行運用を開始する」ことを受け入れました。
 日本政府の同意を受け、米軍は山口県の米海兵隊岩国基地に陸揚げしたままのオスプレイ12機の試験飛行をおこない、沖縄県の普天間基地に移動させて10月から運用を始める予定です。配備に反対している沖縄県民や国民の頭越しで配備や運用を受け入れるのは、断じて容認できません。
運用の安全保証しない
 オスプレイの運用について日米合同委員会で合意した後、森本敏防衛相は記者会見で、国民の理解が得られなくても、日本政府としての「安全性」の確認作業が終わったので「アメリカの飛行運用が始まる」とのべました。まったく国民を無視した姿勢です。
 もともと日本政府は、オスプレイの配備は米軍が決めることで日本は口出しできないという態度でした。政府としても運用の安全を確認したのはそれだけ国民の反対が強かったからですが、政府が確認すれば問答無用で国民に押し付けるというのは横暴のきわみです。日米軍事同盟を絶対視し、沖縄県民の願いも全国各地の自治体・住民の願いもふみにじる、理不尽な態度は絶対に許されません。
 日米両政府が日米合同委員会でまとめた運用ルールも、住民の不安を払拭(ふっしょく)し安全を保証するどころか、安全とは程遠いものです。
 ヘリ機能と固定翼機能を併せ持つオスプレイはヘリモードで離陸し、固定翼機モードに転換する時がもっとも危険といわれます。4月のモロッコでの墜落事故はそのためでした。
 ところが合意は、ヘリモードでの離陸は基地内とするものの、「転換」はできるだけ短時間でというだけで、基地外での転換も認めています。米軍の環境調査報告書は、着陸時は普天間基地から約5キロのところでヘリモードに転換すると明示しています。普天間基地周辺の市街地上空で転換し、もし墜落すれば大事故になります。日米合意が市街地上空での転換を認めたのは重大です。
 低空飛行や学校、病院の上を飛ぶのを制限したというのも何の保証にもなりません。合意が地上から150メートル以上を飛ぶとする一方で、「その高度を下回る飛行をせざるを得ないこともある」とのべているのはその一例です。
 これまでも沖縄では、米軍機の低空飛行などを規制する取り決めがあっても守られたためしはありません。沖縄県民が日米合意を信用せず批判するのは当然です。
沖縄と本土連帯して
 オスプレイがちょっとした操縦ミスでも墜落するのは、「運用」やパイロットの「人為ミス」のためだけではなく、オスプレイそのものに事故が起こりやすい、構造的な欠陥があるためです。いくら運用ルールを決めても危険をなくすことはできません。
 オスプレイが配備される普天間基地は米国防長官でさえ「世界一危険」と認めた基地です。「世界一危険」な基地に欠陥機オスプレイの配備計画は撤回させるしかありません。アメリカいいなりの政府を追い詰め配備を中止させる、沖縄と本土のたたかいがいよいよ重要です。


しんぶん赤旗 2012年9月19日(水)
主張:欠陥機オスプレイ 運用見直しでなく配備中止を
 米海兵隊が沖縄県の普天間基地への配備を決め、山口県の岩国基地へ陸揚げし、試験飛行を計画している新型の輸送機オスプレイについて、日米両政府で配備後の運用見直しの協議が進んでいます。合意すれば日本政府が「安全」を宣言、米側が試験飛行や沖縄への移動を強行する構えです。
 沖縄県民をはじめ国民が求めているのは、事故が相次ぎ危険な欠陥機オスプレイの配備を中止することです。運用見直しぐらいで安全が守られる保証はなく、もともと撤去が求められている普天間基地に新型機を配備すること自体、県民・国民を裏切るものです。
配備中止の一言もなく
 沖縄県民はつい先日も10万人を超す県民大会で、オスプレイ配備反対、普天間基地撤去の意思を表明したばかりです。その声も聞かず、オスプレイを普天間基地に配備するための準備を進めている日本政府は、まさにアメリカの代弁役を忠実に果たしているとしかいいようがありません。
 16、17の両日来日したパネッタ米国防長官に森本敏防衛相や玄葉光一郎外相が、オスプレイの配備中止をただの一言も求めず、両国の外務・防衛当局が参加する日米合同委員会で配備後の運用見直しについて合意すれば、試験飛行や配備を認めるなどと約束したのは、そのもっとも醜悪な姿です。
 とくに森本氏はオスプレイがモロッコやフロリダで起こした墜落事故について「人為的ミス」とする報告を自ら沖縄などに伝え、それでは納得できないと配備を拒否されています。沖縄などが配備を受け入れていないことを百も承知で、運用見直しを合意すれば「安全」だと宣言するというのは、県民・国民の意思を土足で踏みにじるもので、それこそどこの国の大臣かといわれて当然です。
 度重なる事故報告が浮き彫りにしたのは、オスプレイがちょっとした操縦ミスでも墜落などの重大事故を起こす危険な飛行機で、そのこと自体、構造的な欠陥の疑いが濃いということです。オスプレイは、プロペラが止まったとき自動的に体勢を立て直すオートローテーション機能がないなど、構造的な欠陥も明らかになっています。そうした危険な欠陥機が多少運用を見直したからといって安全に運用できるなどありえません。
 日米合同委員会での運用見直しについての協議は一両日中にもまとまるといわれていますが、伝えられているのは日本の航空法にもとづき一定高度以下の低空飛行を規制するなど当たり前のことばかりです。オスプレイは、ヘリのように離陸し、プロペラを倒して、飛行機のような飛行に移るさいがもっとも危険といわれていますが、その「転換」を基地内だけで行うと明記することにさえ、米側は難色を示しているといいます。それでも合意するのでは、政府が住民の安全確保をまじめに考えているとはとても思えません。
普天間基地即時撤去こそ
 もともと普天間基地は、周辺に住宅密集地が広がり、かつて米国防長官でさえ「世界一危険」と認めた基地です。日米両政府間で撤去することが16年も前に合意されているのに、その実行を遅らせ、そのうえ新型の輸送機を配備するなどというのは言語道断です。
 オスプレイ配備を中止させ、撤去を実行させることが重要です。

---------------------------
東京新聞 2012年9月21日
【社説】グアム共同訓練 陸自の海兵隊化を疑う
 陸上自衛隊はグアム島で沖縄の米海兵隊との共同訓練を開始した。米艦艇からゴムボートに移り、強襲上陸する。自衛隊の海兵隊化は必要なのか。そもそも日本になじむのか議論が欠かせない。
 共同訓練は、沖縄駐留の第三一海兵遠征隊による強襲上陸訓練を体得する目的で、九州・沖縄の陸自西部方面隊四十人が参加した。
 防衛省は「特定の国、地域を想定した演習ではない」というが、尖閣諸島をめぐり、中国との関係が極端に悪化する中で「殴り込み部隊」の海兵隊から手ほどきを受けるのだ。中国を刺激するのは間違いない。日本との領土問題を抱えるロシア、韓国も注目することだろう。
 上陸作戦は力ずくで部隊を押し上げ、占拠または奪還する強襲にあたり、陸上自衛隊は訓練の経験、装備ともゼロに等しい。
 訓練は今回がほぼ最初の一歩であり、装備は来年度予算で水陸両用車四両を二十五億円で参考品として購入する。運用構想を練るのはこれから、というのにもう買い物だ。海兵隊は必要か否か、という国会での議論は始まってもいない。防衛省の独走である。
 海に囲まれた島しょへの上陸作戦は、上陸部隊を運ぶ艦艇ごと攻撃される危険をはらむ。制海権、制空権を失った状態での上陸は自殺行為に等しいし、攻撃される危険がないなら、そもそも強襲上陸など不要である。
 海兵隊構想は、四月の北朝鮮による弾道ミサイル発射事案に対応して、落下地点とはおよそ無関係の沖縄本島、宮古島、石垣島、与那国島へ陸自部隊を機動展開させ、おおむね地元から歓迎された成功体験を原点にしていないか。
 「防衛計画の大綱」の南西防衛、島しょ防衛を陸自の生き残り策に利用されてはかなわない。
 米国がグアムに陸自を受け入れたのは新国防戦略の「アジア太平洋の戦力強化」に合致するためとみられる。国防費の大幅削減を打ち出した米国は、地域の安全保障を地域に委ねる考えを示している。自衛隊が平和憲法の制約なく、海外で軍事行動できるようになるなら、海兵隊のノウハウを伝えることなど、お安いご用だろう。
 八月に発表された米国の知日家グループによる第三次「アーミテージリポート」は一次、二次に続いて日本に集団的自衛権行使に踏み切るよう求めた。共同訓練に「自衛隊の米軍化」の狙いが潜むなら断固、反対する。

0 件のコメント: